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2020/07/17 12:55
消臭スプレーなどによく使われている銀には、抗菌作用があるということは有名ですね。
銀の抗菌作用はなんと銅の10倍もあり、またほとんどの病原菌に対して殺菌作用があります。しかし、その殺菌のメカニズムは現代の科学をもってしてもまだ解明されていないようです。ですが、防腐剤として大変古くから使わて来ており、歴史的にもその効果と安全性が証明されているのが銀です。
ほとんどの病原菌に対して殺菌効果がある
アリゾナ大学の研究ではほとんどの病原菌に対して殺菌作用があることが確認されています。また濃度によって殺菌力が変化したり、蒸発してなくなってしまう塩素やアルコールのなどの消毒剤と違い、持続的に殺菌し続けてくれる力(抗菌作用)があります。また、塩素やアルコールが皮膚の水分を奪って手荒れを起こしたりしますが、銀にはそういった心配がありません。金属の中でも比重の重い重金属類には抗菌作用がある金属が多く、銅にも抗菌作用があります。しかし、銀は銅の10倍の抗菌作用があります。また重金属の中でも抗菌作用が強いのが銀と水銀ですが、水銀には強い毒性があります。また他の抗菌材に比べて銀は耐性菌もできにくく、抗菌材としては非常に優れた性質を持っています。
ブドウ球菌 |
中耳炎、肺炎、敗血症、心内膜炎、や食中毒の原因となる。 |
サルモネラ菌 |
チフス性疾患や急性胃腸炎を起こし、髄膜炎、関節炎などをも引き起こす。 |
赤痢菌 |
細菌性赤痢を起こし、水を介して経口感染する。 |
クレブシェラ |
気道、尿路などから感染し、敗血症を起こす。 |
レジオネラ屬菌 |
飛沫を吸引することにより(気道感染)、肺炎などを起こす。 |
シュードモナス |
水中に分布し、多くの菌種が消毒剤、紫外線、抗菌剤に抵抗性で難治性感染症の原因になりやすい。 |
ポリオウィルス |
小児麻痺を起こす。経口的に感染する。 |
ロタウィルス |
乳幼児の下痢症(仮性コレラ、白痢)、学童の集団下痢症の主な原因ウィルスである。 |
ヘルペスウィルス |
持続感染を起こしやすく、水痘・帯状疱診ウィルスを含む。 |
アリゾナ大学レポートの一例
http://www.ion-net.co.jp/ginn-tishiki.htmより
銀の抗菌作用のメカニズム
銀は水に溶けて銀イオン(AG+)になり、細菌の活動を阻害して死滅させてしまいます。銀イオンの殺菌作用を最初に科学的に説明したのは1929年のドイツの細菌学者G・クラウスです。クラウスは「銀イオンと細菌との間で静電気作用が働き、細菌に銀イオンが吸着されて結果的に細菌が生命力を失う」と説明しています。現在では下記の3つの説が銀の抗菌作用を説明する有力な仮説となっています。
活性酸素説
銀イオンが水中の酸素を活性酸素に変え、この活性酸素が細菌の細胞 膜を傷つけて死滅させる
酵素障害説
細菌の細胞内に侵入した銀が細胞の酵素の働きを阻害して死滅させる、
細胞分裂停止説
細菌の細胞内のDNAに侵入して細胞分裂を阻害する
いずれも仮説であり、銀の抗菌作用については謎が多く、はっきりとしたメカニズムはいまだに解明されていません。
抗菌のメカニズムが解明されていない銀ですが、世界中で防腐剤として使われてきた長い歴史があります。古代ローマ字時代にはワインの腐敗を防ぐために銀の壺にいれて保存していました。古代ギリシャやエジプト人やインド人も同様に銀の壺に水などを保管していたとう記録が残っているようです。中世のヨーロッパでは、王室や貴族は銀の食器を使っていました。また、船の飲料水を運ぶために銀の壺が使われていたり、井戸に銀のコインを沈めておくと伝染病が発生しないことも知られていたようです。100年前のアメリカでも、牛乳の防腐剤として銀のコインが使われていたという記録も残っています。アメリカやヨーロッパでは、飲料水の殺菌に塩素の代わりに銀を用いている地域もあります。私たちの身近な例では森下仁丹があります。仁丹の表面は保存性を高めるため銀箔でコーティングされています。
毒見にも使われていた銀
銀が中世ヨーロッパの貴族の間で食器類の素材として使われてきた理由は防腐効果だけではなく、ヒ素系の毒に反応して変色するため、毒見の効果もあるからです。ヒ素には硫黄を含んだ化合物が含まれており、銀器にヒ素を載せるとこの硫黄と反応して銀が黒く変色します。日本の大名の毒見役も銀の箸を使っていたという記録もあります。
安全で体にやさしい素材
歴史が証明しているように、銀は強い抗菌作用があり、人体には害がない安全な素材なのです。世界保健機構(WHO)によっても、銀化合物による発癌性、急性暴露、慢性暴露による人体への影響はないとされています。さらに銀の素晴らしいところは金属アレルギーになりにくいということです。皮膚トラブルでの中でも、アクセサリーによるアレルギー性接触性皮膚炎は多く日本では10パーセントの人が金属アレルギーを持っているといわれています。1987年東京都済生会中央病院皮膚科の金属パッチテスト調べでは、純銀に関してはアレルギーを発症した人はいなかったようです。アレルギーの面からも体にやさしい素材なのです。
ドラキュラや狼男の退治に銀の武器が使われます。銀の器に入れたものは腐りにくいという、銀の衛生的に優れた性質や、毒物から身を守ってくれることからか、西洋の民間伝承の中で銀製品には魔除けなど特別な意味が込められています。美しい光沢をもつ貴金属として、抗菌材として、食器、装身具にそして魔除けに。銀は人類にとってまさに重宝されてきた魅力的な素材です。新型コロナの影響で公衆衛生の問題が注目される昨今の状況ですが、先人の知恵に学んで銀製品の使い方を見直してみる良い機会かもしれません。
参考URL
http://www.japan-ion.com/other/silver_system.pdf 日本イオン株式会社
http://hagegaku.com/ingredients-info/銀/ ナカミル
https://www.countrygentleman.co/post/2018/01/16/ COUNTRY GENTLEMEN 銀食器の知られざる歴史